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コトノハの調べ

ここはPBW、学園伝綺RPG【SilverRain(シルバーレイン)】世界に居る桜月・雛乃のブログサイトです。 主に活用される【綴り語り】は 、雛乃が出逢った人 場所がそのまま反映されます。 特にその事に関しての告知をしませんが、もし、その内容に不快を感じるならすぐ削除させて頂きます。 ですが出来るなら、どうか寛大なご理解と共にお許し頂けるととても嬉しく思います。

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【第八夜】想い・心の変化


自分の結社も設立し
他の結社のお世話にもなって

以前よりは少しずつ・・
あの時よりは・・・少しずつ
人との関わりに慣れたように思う

お話してて・・

逃げ出したい・・・
誰にも会いたくない・・

そんな風に前より思わなくなった・・
でも・・・ココロの何処かで

いつまた誰かが
自分の前に居なくなってしまう

そんな恐怖を拭い切れない自分が
確かに存在するのだ

だからこそ・・素直に甘えたり出来ない・・
淋しいのを・・淋しいと声に出す事も・・・
ましてや自分の感情を表に出すのも・・

その一歩を踏み出す事がどうしても
・・・どうしても出来ない

信じてない訳じゃない・・
お話してるのは楽しい
何かをしてると・・暖かいキモチになる

兄と一緒に過ごしてた日々とは
また違う想い・・・

きっと自分が弱いのだ
自分の心が弱いのだ

もう一人の自分が自分を責める

相手を信じないで
自分を信じろと言うのは虫が良すぎる
そんな人とは誰も心を開いたりはしない


・・・・解ってる・・・解ってる


・・・・・でも
何かが自分を止めてしまう
自分の中の何かの壁が
そちら側に行かせてようとしない

違う自分が自分に告げる

傷つくのを恐れてたら
何も始まらない
相手にして欲しい事があるのなら
自分が先に示すべきだ

・・・・・解ってる・・・も・・責めないで・・
・・・・・・追い詰めないで・・


『・・・・お兄ちゃん・・・・コワイ・・・』

涙目になりながら
うさちゃんをぎゅっと抱きしめる


勇気はどうやって生まれるの・・?・・
力はどうやって使うものなの・・?・・

・・・・・ココロは・・どうしてこんなに揺れるの?・・




・・・・・花畑の中
兄が雛乃に微笑みかけながら告げる

『・・・雛乃・・・・雛乃・・・
 自分のペースでしてごらん・・
 焦って・・急いで無理をする事はないよ?
 いつか・・いつか何かが生まれるから・・』

(『・・・・待って・・お兄ちゃん・・』)

声にならない呼び声は届かず
まばゆいヒカリの中
愛しい者は消えてゆく


・・・・はっとして・・目覚める
夢だと解るのに、少し時間が掛かった

『・・・お兄ちゃん・・』

今は少しずつ・・前に進めるように
一歩じゃなくても・・半歩でも
時には立ち止まって、考えたり
後退したとしても・・

きっと・・何かが生まれるんだね・・?・・

『・・・そうだよね?・・お兄ちゃん・・・』


だから・・・・・今は・・思いを胸に
そっと・・胸の中に・・・

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【第七夜】勇気・結社への入団

夢を見た。
泣いてる雛乃に兄は言った
「泣きたい時は思いっきり泣けばいい・・
でも一人で泣いちゃダメだ
そんなのは淋しすぎるからね
そういう時はいつでもお兄ちゃんを呼ぶんだよ?
いつでも雛乃の傍に居るから」

でもお兄ちゃんはもう居ない・・
(『お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・』)
届かない兄を呼ぶ声

「雛乃・・雛乃泣かないで・・
一人じゃないよ・・雛乃は一人じゃない
僕達はいつでも雛乃を見守っているから・・
雛乃が淋しい時・・傍に居れないかも知れないけど・・
その時は星空を見て祈って・・きっと願いは届くから・・」

(『お兄ちゃん・・行かないで・・一人にしないで・・』)

「雛乃・・きっと願いは届くから・・」

はっとして目を覚ます
「・・・お兄ちゃん・・」

お兄ちゃんの淋しそうな顔・・・
夢の中のお兄ちゃんは哀しそうな顔をしてた
「・・・・・・」
自分は一体どうしたら良いのだろう・・

結社【コトノハ】に向かう中
楽しそうに話す生徒たちが雛乃の横を通り過ぎる
それを見て雛乃は、逃げるように結社に向かった

・・・避けていた・・人との関わりを全て
ひなの前から誰かが居なくなる
もうそんな思いはしたくない

関わらなければ誰も傷つかないと思ってた
何より自分が傷つく事が怖かったから・・
確かにそうすれば誰も傷つかない

でもそれで・・ほんとに良いの・・?・・
それじゃ・・何も変わらない
ずっとこのまま生きてるだけ・・ただ生きてるだけの・・
何も無い・・何も・・ただの・・

だから最近兄の夢を見るのか
兄が自分を心配して・・
その兄は夢の中で何か言いたげだった

ふと何処からとも無く音が聴こえる
音と言うより・・メロディ
「どこから・・・?・・」

音のする方へ歩いてると・・
(『誰か歌ってる・・?・・』)

扉の向こうからの優しいメロディ
どこか懐かしさを感じさせる旋律・・

そう・・あの頃・・
あの小高い丘の桜の樹の下で歌ったあの頃
兄が亡くなって・・歌の事思い出したくも無かった・・
哀しくなるから・・・

でも・・哀しくはなかった・・
心に響く何か・・
無意識に口ずさんでる自分が居る事に驚く

そして雛乃は旅団【*+Desperado+*】に入団をする。


そこの頃から雛乃は廻りに目を向けるようになった
学園の事・・自分の事・・色んな・・
今日もいつものように散策してると
ある結社の大きな水槽が目に入る

吸い込まれるように水槽の中を見つめる雛乃
「お魚さん・・とっても気持ちよさそうに泳いでるの・・」
とっても嬉しそうに・・楽しそうで・・何より自由に

お魚さんにとってはこの水槽の中が自分たちの世界・・
この中で助け合って生き・・誰かの為に・・自分の為に
自由に暮らしてるの・・

ひなも・・そんな風になれるかな・・
自由に・・誰かの力にもなれて・・助けられるのかな・・
このひなの中にあると言う不思議な力で
それを見つけられれば・・どんなに良いだろう・・

そして・・もう一つの結社【【Cure Water】】に入団する。


夜・・星を見上げ誰とも無く呟く
「まだ結社の人たちとお話しする機会はないけど・・
 この2つの結社のみなさまと一緒に居て・・
 何かが見つけられたら・・いいな・・
 だから・・・見ててね・・・」

夜空から・・流れ星が落ちた



【第六夜】出発・新しい生活


銀誓館学園の学園生活を送って数日が過ぎた

この学園に来て解った事・・
ここに通う生徒の中には
何かしらの不思議な能力を持っている人も居るという事
クラブ活動も活発で
いっぱんの生徒が入部するクラブの他に、能力者だけが
入団する特別なクラブ『結社』が用意されてる事

そして何より・・・雛乃もその能力者の一人であると言う事・・

【フリッカースペード】
音楽という技術を魔術の域にまで高めた存在
声を操る者。歌声で相手に自分の想いを届ける
・・・それが雛乃の不思議な力

歌は・・・スキ・・
スキ・・だった・・・

ひなの歌がスキって言ってくれたから
一緒に笑ってくれる人が居たから

・・・・ひなの歌を喜んでくれたから
でも・・もうその人は居ない・・・・

「・・・お兄ちゃん」
心の呟きが声として発する
その名をコトバにしただけで・・・涙溢れる

何度こうして涙を流しただろう
・・・・止まらない
枯れて・・なくなってしまう事は・・いつかあるのかな

きゅぅ・・・
今はたった一つ残された唯一の宝物
兄から貰ったウサギのぬいぐるみ・・
泣き顔を隠すように雛乃は強く抱きしめた

ある日
クラブ棟を抜け、学園を散策してると
大きな古樹を見つける

「・・・大きな樹・・いつからここに居るのかな・・」
その樹に顔を寄せ、目を閉じ耳を澄ます

まるでその樹の水の流れが聞こえるような
そんな不思議な感覚
「・・・何だか・・・凄く落ち着くの・・」

樹々の上の方から鳥のさえずりがきこえる
「ここに・・ひなの・・ひな達の場所を作ってもいい・・?・・」
見上げ雛乃は古樹に問いかける

はらはらと葉が落ち
雛乃にはそれが答えのように思えた

「・・・・ありがと・・」
雛乃は古樹に、そっと体を預けた


それから数日後
結社【コトノハ】を結成する事となる

【第五夜】喪失・心の拠り所


休みでも何処かに出かけてしまう兄
一人残される家の中は、とても広く、静かで
もしかしたら兄は、このまま帰ってこないんじゃないか
不安になり、玄関で兄の帰りを何度か待っていた時もあった

でもそんな不安は、扉を開け
「ただいま・・」という兄の声で一気に消えてしまう

それだけ雛乃の中の兄の存在は大きい

そんな兄が
「雛乃・・今日は逢わせたい人が居るんだ」

兄とのお出かけ
こうして一緒に居るのは
本当に久しぶりだ

目的が何だとしても
兄と居られる時間が一番

「嬉しそうだね・・雛乃のそんな顔を見るのは
 久しぶりのような気がするよ」
兄も嬉しそうに雛乃に言う

「お兄ちゃんとこうしているのが嬉しいの・・」
にこにこしながら答える

「僕も嬉しいよ」

兄と話しながら向かう先は・・
「・・・・病院・・?・・」

不思議そうに尋ねる雛乃に
「そうだよ?僕と雛乃だけになってから
色々相談にのってもらってるんだ」

「やぁいらっしゃい。よく来たね」
雛乃たちを迎えたのは
おじさんと呼ぶにはまだ若い感じの人だった

「お父さんの知り合いで、この病院の先生をなんだよ」
兄が目の前の人を雛乃に紹介してると

「小さな個人病院だよ・・
 ここはね・・ 具合が悪いとかじゃ無くても
 近所の人や子供達が来てね
 おしゃべりしたり一緒に遊んだりね
 私の本来の仕事をする事はあまり無いんだ・・
 でもそれは・・・それだけみんなは元気だって事だよね
 私はそれでも良いって思うよ・・
 雛乃ちゃんも今度遊びに来ると良い」

嬉しそうに語るその医師を
雛乃は兄の後ろに隠れ、ただ・・こくんと頷くのだった



「それじゃ・・僕たち失礼します」
「・・・ばいばい・・」
2人はその医師におじぎをして後をしようとする

「あ・・ちょっと待ちなさい。少し話をしたいのだか・・」
雛乃たちを呼び止める医師

「・・・はい・・雛乃ちょっと待っててね」
医師に近づき兄は治療室に入り、
雛乃は長椅子のある待合室で兄を待つ

治療室に入った途端、兄はその場で崩れるように倒れる
「君っ!・・あれ程無理をしないようにと言っていたのに
 今すぐに入院をしなさい。これは医師として言ってるのだよ
 これ以上今の生活をしていく事は君には無理だ
 もし君からあの子に言えないのなら、私が伝えよう」

医師の言葉に兄は苦しそうに
「待ってください・・せめて1日・・あと1日だけ待って下さい
 僕からちゃんと・・
 僕の口からちゃんと雛乃に伝えたいんです」

「・・・・解った。君の意見を尊重しよう。でもこれが最後だ」

「・・・感謝します」



・・・・その夜・・
「雛乃話があるんだ」
いつになく真剣な面持の兄に
雛乃は頷く事しか出来なかった

「雛乃に黙っていた事があるんだ
 僕は・・僕の体はね・・病に侵されててね
 今日逢ったおじさん憶えてるね?
 おじさんに入院しないといけないって言われてね
 だから・・
 明日からおじさんの病院に入院しないといけないんだ」

突然の話・・
突然・・だったろうか?そんな気はしなかったか・・
最近兄が疲れた顔をしてるのを雛乃は知ってる

「でも・・でもお兄ちゃん・・・・
 おじさんの所で入院して、病気治ったら
 またこうして一緒に居られるんだよね?そうだよね?・・」

不安が広がる・・暗闇が広がってく
頷いて欲しい
『バカだな・・決まってるだろう』って
いつものように笑って欲しい
祈りにも似た願い

「雛乃・・・
 いつかはあの星空の向こうにみんな逝ってしまうんだ
 それが人によって早いか遅いかだけで・・・
 みんな同じ場所にいくんだよ」

(『お兄ちゃん・・それはどういう意味・・?・・』)
言葉が出ない。変わりに涙が溢れてくる

そんな雛乃を見つめ
「変えられないんだ・・
 お兄ちゃんを許してとは言わない。でも・・・現実なんだよ
 だから・・ちゃんと聞いて
 憎んじゃいけない・・恨んじゃいけないよ・・
 そして・・自分のせいにしちゃいけない
 雛乃が悪いんじゃないんだ・・
 これはきっと僕の試練・・かも知れないね
 ・・・後の事はおじさんに全てをお願いしたよ
 だから何か困った事があったらおじさんを頼るんだ」

雛乃は他人事のように兄の言葉を聞いてた

これは現実?本当なの・・?・・どうして・・?・・
兄はこの現実を受け入れ戦おうとしてる
結果の見えてる戦い・・・
その事に何の意味があるのか・・・

次の日
兄は雛乃に伝えた通りおじさんの病院に入院した

雛乃もその日より病室で寝泊りをするようになった
少しでも兄と一緒に居たいという気持ちもあった
顔色も以前より白く、体も痩せ
まるでベッドに体力を吸われていくようだ
口数も少なく、起きている時間もあまり無い
むしろ寝てる事が多く
起きてるとしても、辛そうにしてた
そんな兄に何も出来ない自分が凄く悲しかった

ここ数日で憶えた事・・声を殺して泣く事
兄を・・病と闘ってる兄に心配を掛けたくなかったから
だから・・兄が起きてる時は
兄が好きだと言ってくれた笑顔で居ようって・・
最近・・やっと思えるようになった


ある時
兄がめずらしく長い時間起きていた
窓を見つめてる兄
そこから見えるのは、初めて雛乃と出逢った場所
あの小高い丘の桜の樹が見えるのだ

「あの桜の樹もうあんなに咲いてるんだね」

まぶしそうに見つめる兄に
「うん・・とっても綺麗だね・・また一緒にあの丘に行って
 お詩うたったら小鳥さん来るかな・・」

「そうだね・・来るかも知れないね・・・じゃ行ってみようか・・今から・・」

突然そんな事を言う兄に
「でもお兄ちゃん・・今は病気治さないと・・」

「今日・・今行きたいんだ・・連れて行ってくれないか雛乃・・」

有無を言わせない、いつもの兄とは想像付かない
強気な言葉に雛乃は頷いて
車椅子に兄を座らせ病室を出る

後ろから
「私に黙って何処に行こうと言うんだい。君たち」
医師の厳しい視線が雛乃たちを阻む

「あのね・・お兄ちゃん桜の樹見に行きたいって言うから・・
だから・・」
怖いと思いながらも医師に説明する

雛乃の言葉に兄の方に視線を向け
「勝手は困るよ。私も一緒に行こう・・
 私は君の担当医だからね」

「僕たちだけで行かせて欲しいんです・・お願いします」

兄の何かの決意を垣間見た医師は、溜息をつき
「・・・・解った・・30分だけだからね・・
 時間過ぎても戻らなかったら
 迎えに行くよ・・解ったね?」

「・・・・ありがとうございます」



「・・・・綺麗だね・・」

小高い丘の上
心地良い風で枝が揺れ、桜の花びらがはらはらとおちる
兄は車椅子から降り、丘に寝転がり桜を見上げてる

何かが落ち着かない・・何だろう・・
病室でない兄との久しぶりの2人きり

そんな気持ちを誤魔化すように兄を膝枕する
「・・・ありがとう・・凄く楽になったよ
 雛乃に逢ったのが、つい昨日のように思い出すよ
 初めて雛乃を見た時、雛乃は僕が守る
 そうして居たいって思ったんだ・・小さいながらね
 雛乃は僕にとって大切な存在なんだよ・・今もそうだ」

兄の言葉に涙が出そうになるのを堪えて
「ひなも・・お兄ちゃんが好き・・・大好き・・」

兄はそんな雛乃を微笑みながら見つめ
「・・・・・もう少し雛乃が大きくなって
 僕の前に好きな男の子を連れて彼氏を紹介するのかな・・
 僕は許せなくて雛乃はお前になんかにやるものかって・・
 ・・それでも
 雛乃が幸せだったら僕は許してしまうんだろうね
 ・・・そんな事・・してみたかったよ」

雛乃は
「・・・・元気・・になったら・・出来る・・」
やっと伝え出た言葉はそれだけだった・・
話したい事たくさんあるのに、上手く伝える事が出来ない
頭の中がもやもやしてて考えられない

「ごめんね・・
 僕はそろそろ星空の向こうに
 逝かなくてはいけないみたいだよ
 自分の事だからね解るんだ
 最後にね。ここに来たかったんだ・・雛乃と2人で」

何かが雛乃の中で弾ける
「やぁっ・・・やだぁ・・お兄ちゃん・・・
 お兄ちゃん逝っちゃやぁ・・
 逝くなら、ひなも連れて行って・・ひなも行くの・・」
我慢してた心の感情が飛び出す
止める事の出来ない涙は、兄の頬に伝う

雛乃の頬を撫で涙を拭ってあげながら
「雛乃・・・雛乃は僕の分まで
 ・・僕たちの分まで生きて
 生きてこれからの雛乃を・・
 大きくなる雛乃を僕たちに見せて・・・」

雛乃は首を振りながら
「一人じゃ・・ひなはダメなの・・
 お兄ちゃんが居ないとひなは生きてけない・・
 これ以上大切な誰かが居なくなっちゃの・・・やだよぉ・・」

「雛乃・・雛乃泣かないで・・
 一人じゃないよ・・雛乃は一人じゃない
 僕たちはいつでも雛乃を見守っているから・・
 雛乃が淋しい時・・傍に居れないかも知れないけど・・
 その時は星空を見て祈って・・きっと願いは届くから・・・
 だから笑って・・泣かないで・・
 雛乃の悲しい顔は見たくないよ・・」

「願いが届くなら・・お兄ちゃんを連れてかないで・・
 連れて行くならひなも一緒に連れて行って・・
 それが叶わないのなら・・ひなは・・何も要らないっ!!」

「雛乃・・・雛乃ごめんね・・
 泣かせてごめん・・・
 雛乃・・・僕の大切な・・雛乃・・大好きだよ・・・」

その言葉を告げると力が抜けて
目を瞑った兄は、二度と雛乃と言葉を交わす事も
自分を見つめ、微笑む事は無かった

「やぁぁぁぁぁ・・・・・・」





兄のお葬式が滞りなく終わり
家族と過ごしてた家は売り払われ
今雛乃は、後見人である医師の家に世話になっている

あの日・・医師が駆けつけた時
混乱・狂気状態の中
決して誰にも兄を触らせるようとしない雛乃を
無理に引き離されから
雛乃はまるで表情を無くした人形のように
言葉紡ぐ事を忘れてしまったようだった

そして詩をうたう事も・・・


・・・ただ・・兄からプレゼントされた
ウサギのぬいぐるみは離さず、ぎゅっと抱いてた


・・・・それから数ヵ月後
兄が生前に入学の手続きをしてた
銀誓館学園を訪れる事となる

【第四夜】暗雲・嵐の予兆


両親がこの世を去り、兄との2人暮らしが始まる
一緒に過ごせる時間も短くなったけど
決して淋しいとは言わない・・言えなかった

兄が大学を辞め、働いている事を知っているから
その兄が最近疲れた顔をしてるのが心配

「遅くなってごめんね雛乃。今ご飯の支度するからね」
兄はちゃんと休めているのだろうか?

「・・お兄ちゃん・・ひなだって少しくらいお手伝い出来るよ?
だから・・あんまり無理しないで・・」
雛乃は自分の出来る限りの事はしたいと思ってる

だが兄は
「そんな事雛乃が気にしなくて良いんだよ?
僕は大丈夫だから」
雛乃の頭を撫でながら休む間もなくキッチンに向かう

(ひなだって・・出来るのに・・・)
兄の後姿を見つめるばかりだった

「あ・・そうだ雛乃この包みを開けてごらん」
一通り終え、ソファでくつろいでいる時
兄が雛乃に大きな包みを渡す
「・・?・・なぁに・・?・・」

兄に尋ねる雛乃に
「雛乃には淋しい思いをさせてるんじゃないかと思ってね
あるお店で見つけてきたんだよ?
気に入ってくれると嬉しいけど・・」
包みを開けてる雛乃に微笑みながら答える

中から出てきたのは・・
「わぁぁぁ・・・・うさぎのぬいぐるみ・・・」
瞳をキラキラさせそのぬいぐるみをぎゅってしてる

「お兄ちゃん・・お兄ちゃん・・嬉しい・・ありがとぉ・・」
うさぎのぬいぐるみをぎゅってしながら
飛びつくように兄に抱きつく

そんな雛乃を抱きとめながら
「気に入ってもらえて嬉しいよ・・雛乃の新しいお友達だよ?
淋しくないよね・・?」

何気ない兄の一言が雛乃には何か引っかかる。兄を見上げ
「・・・お兄ちゃん・・どこか行っちゃ・・・の・・?・・」

不安げに見つめる少女に
「・・・・雛乃・・もしお兄ちゃんが居なくなったら
・・どうする?・・」

考えても見ない一言が兄から返ってきた。雛乃は涙をため
「やだっ・・何処にも行っちゃ・・・行っちゃ・・やぁ・・」
力いっぱいぎゅっと抱きついて泣きじゃくる

そんな雛乃をなだめるように
「ごめん・・・ごめんね・・もしって話だよ・・
僕だって雛乃を残してどこかに行く事なんて出来ない
大丈夫。何処にも行かないよ・・」
それ以上兄はこの少女に何も告げる事が出来なかった

「ひっく・・一人にしないで・・一人にしちゃ・・やなのぉ・・」

大切な誰かがこれ以上自分の前から居なくなるなんて
そんなの絶対にやだ
も・・・大切な誰かを失いたくない・・
今にも消えて居なくなってしまいそうな錯覚を憶え
雛乃は、この大きな暖かい温もりを無くしたくなくて
兄に離れなかった
そんな雛乃を兄はただ抱きしめるしかなかった

次の日の朝
「雛乃・・今日は少し遅くなりそうなんだ。ちゃんと戸締りして
夕飯は冷蔵庫に作ってあるから、温めて食べるんだよ」

「・・・うん。解った・・」
昨日の兄の言葉が雛乃を暗くさせる

「・・・それじゃ行ってくるね」
少し溜息をつきながら、雛乃が元気が無い原因は解ってる
兄は雛乃の頭を撫で家を出る



「桜月に続いて君までこんな事になるとは・・・」
ここは両親の知り合いの個人病院
両親が亡くなって、色々相談にのってくれてる
唯一信用できる大人の一人だ

「君の病気は手の施しようがない長くて1ヶ月・・・
医者として不甲斐ない
大切な友人を失い、またこうしてその息子まで
何も出来ないなんて本当情けないよ
何の為の医者なんだろうね」
はき捨てるように言う

「先生・・そんな自分を責めないで下さい
体の不調を予兆してたのに
僕が放っておいたのが悪いんですから
こうして大切な妹を残して逝こうとする
・・・・・・むしろ自分が憎いですよ」と自嘲気味に笑う

「僕は、僕の事を受け入れるにはまだ幼い雛乃が心配です
このような事、先生に頼むのは筋違いかも知れませんが
どうか・・妹の支えにはなっては頂けないでしょうか?
後見人として・・お願いしたのです
親戚の者は雛乃を良く思ってない
だから僕が居なくなった時雛乃が阻害されたら・・僕は・・」
拳を見つめながら、唇を噛む

そんな兄を見た医者は
「私は君達の身内ではないが
出来るだけのサポートはするつもりだよ
それが桜月に何も出来なかった私の償いになるのならね」

「ありがとうございます」深々と頭を下げる

「君もあまり無理しないように命を削るようなものだからね
何か困った事があったら、すぐ相談して来なさい」

「・・・はい。今は雛乃と出来るだけ一緒に居てやりたいです
・・・いいえ・・僕自身もそうしたいと思います」



雛乃は空を見上げてる
「お父さん・・お母さん・・今日はど・・して・・現れないの?・・
ひな・・コワイ・・・お兄ちゃんまで連れて行かないで・・・」

雛乃の声は虚しく響く

星が一つも無く
どんよりと雲がかかっており
今にも泣き出しそうな夜空だった

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プロフィール

HN:
桜月・雛乃
年齢:
27
性別:
女性
誕生日:
1997/02/02
職業:
フリッカースペード
趣味:
詩(歌)を考える事
自己紹介:
【カテゴリー説明】

☆綴り語り
 ⇒出逢い・経験した物語を綴る場所

☆詩
 ⇒自分のお気に入りの詩紹介・もしくは想う事を詩に書き記した場所

☆イラスト絵日記
 ⇒完成したイラストを雛乃が日記で紹介する場所

☆雛乃日記
 ⇒雛乃の呟き場所

☆影さん事情
 ⇒PLの呟き場所

【呼び方】

☆下級生・同級生
⇒《女の子》名前+ちゃん
  《男の子》名前+くん

☆上級生
⇒《女の子》名前+お姉ちゃん
 《男の子》名前+お兄ちゃん


※メッセ登録の際は、
 お手紙にてご連絡下さい
【hina-usa@hotmail.co.jp】

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