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コトノハの調べ

ここはPBW、学園伝綺RPG【SilverRain(シルバーレイン)】世界に居る桜月・雛乃のブログサイトです。 主に活用される【綴り語り】は 、雛乃が出逢った人 場所がそのまま反映されます。 特にその事に関しての告知をしませんが、もし、その内容に不快を感じるならすぐ削除させて頂きます。 ですが出来るなら、どうか寛大なご理解と共にお許し頂けるととても嬉しく思います。

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【第五夜】喪失・心の拠り所


休みでも何処かに出かけてしまう兄
一人残される家の中は、とても広く、静かで
もしかしたら兄は、このまま帰ってこないんじゃないか
不安になり、玄関で兄の帰りを何度か待っていた時もあった

でもそんな不安は、扉を開け
「ただいま・・」という兄の声で一気に消えてしまう

それだけ雛乃の中の兄の存在は大きい

そんな兄が
「雛乃・・今日は逢わせたい人が居るんだ」

兄とのお出かけ
こうして一緒に居るのは
本当に久しぶりだ

目的が何だとしても
兄と居られる時間が一番

「嬉しそうだね・・雛乃のそんな顔を見るのは
 久しぶりのような気がするよ」
兄も嬉しそうに雛乃に言う

「お兄ちゃんとこうしているのが嬉しいの・・」
にこにこしながら答える

「僕も嬉しいよ」

兄と話しながら向かう先は・・
「・・・・病院・・?・・」

不思議そうに尋ねる雛乃に
「そうだよ?僕と雛乃だけになってから
色々相談にのってもらってるんだ」

「やぁいらっしゃい。よく来たね」
雛乃たちを迎えたのは
おじさんと呼ぶにはまだ若い感じの人だった

「お父さんの知り合いで、この病院の先生をなんだよ」
兄が目の前の人を雛乃に紹介してると

「小さな個人病院だよ・・
 ここはね・・ 具合が悪いとかじゃ無くても
 近所の人や子供達が来てね
 おしゃべりしたり一緒に遊んだりね
 私の本来の仕事をする事はあまり無いんだ・・
 でもそれは・・・それだけみんなは元気だって事だよね
 私はそれでも良いって思うよ・・
 雛乃ちゃんも今度遊びに来ると良い」

嬉しそうに語るその医師を
雛乃は兄の後ろに隠れ、ただ・・こくんと頷くのだった



「それじゃ・・僕たち失礼します」
「・・・ばいばい・・」
2人はその医師におじぎをして後をしようとする

「あ・・ちょっと待ちなさい。少し話をしたいのだか・・」
雛乃たちを呼び止める医師

「・・・はい・・雛乃ちょっと待っててね」
医師に近づき兄は治療室に入り、
雛乃は長椅子のある待合室で兄を待つ

治療室に入った途端、兄はその場で崩れるように倒れる
「君っ!・・あれ程無理をしないようにと言っていたのに
 今すぐに入院をしなさい。これは医師として言ってるのだよ
 これ以上今の生活をしていく事は君には無理だ
 もし君からあの子に言えないのなら、私が伝えよう」

医師の言葉に兄は苦しそうに
「待ってください・・せめて1日・・あと1日だけ待って下さい
 僕からちゃんと・・
 僕の口からちゃんと雛乃に伝えたいんです」

「・・・・解った。君の意見を尊重しよう。でもこれが最後だ」

「・・・感謝します」



・・・・その夜・・
「雛乃話があるんだ」
いつになく真剣な面持の兄に
雛乃は頷く事しか出来なかった

「雛乃に黙っていた事があるんだ
 僕は・・僕の体はね・・病に侵されててね
 今日逢ったおじさん憶えてるね?
 おじさんに入院しないといけないって言われてね
 だから・・
 明日からおじさんの病院に入院しないといけないんだ」

突然の話・・
突然・・だったろうか?そんな気はしなかったか・・
最近兄が疲れた顔をしてるのを雛乃は知ってる

「でも・・でもお兄ちゃん・・・・
 おじさんの所で入院して、病気治ったら
 またこうして一緒に居られるんだよね?そうだよね?・・」

不安が広がる・・暗闇が広がってく
頷いて欲しい
『バカだな・・決まってるだろう』って
いつものように笑って欲しい
祈りにも似た願い

「雛乃・・・
 いつかはあの星空の向こうにみんな逝ってしまうんだ
 それが人によって早いか遅いかだけで・・・
 みんな同じ場所にいくんだよ」

(『お兄ちゃん・・それはどういう意味・・?・・』)
言葉が出ない。変わりに涙が溢れてくる

そんな雛乃を見つめ
「変えられないんだ・・
 お兄ちゃんを許してとは言わない。でも・・・現実なんだよ
 だから・・ちゃんと聞いて
 憎んじゃいけない・・恨んじゃいけないよ・・
 そして・・自分のせいにしちゃいけない
 雛乃が悪いんじゃないんだ・・
 これはきっと僕の試練・・かも知れないね
 ・・・後の事はおじさんに全てをお願いしたよ
 だから何か困った事があったらおじさんを頼るんだ」

雛乃は他人事のように兄の言葉を聞いてた

これは現実?本当なの・・?・・どうして・・?・・
兄はこの現実を受け入れ戦おうとしてる
結果の見えてる戦い・・・
その事に何の意味があるのか・・・

次の日
兄は雛乃に伝えた通りおじさんの病院に入院した

雛乃もその日より病室で寝泊りをするようになった
少しでも兄と一緒に居たいという気持ちもあった
顔色も以前より白く、体も痩せ
まるでベッドに体力を吸われていくようだ
口数も少なく、起きている時間もあまり無い
むしろ寝てる事が多く
起きてるとしても、辛そうにしてた
そんな兄に何も出来ない自分が凄く悲しかった

ここ数日で憶えた事・・声を殺して泣く事
兄を・・病と闘ってる兄に心配を掛けたくなかったから
だから・・兄が起きてる時は
兄が好きだと言ってくれた笑顔で居ようって・・
最近・・やっと思えるようになった


ある時
兄がめずらしく長い時間起きていた
窓を見つめてる兄
そこから見えるのは、初めて雛乃と出逢った場所
あの小高い丘の桜の樹が見えるのだ

「あの桜の樹もうあんなに咲いてるんだね」

まぶしそうに見つめる兄に
「うん・・とっても綺麗だね・・また一緒にあの丘に行って
 お詩うたったら小鳥さん来るかな・・」

「そうだね・・来るかも知れないね・・・じゃ行ってみようか・・今から・・」

突然そんな事を言う兄に
「でもお兄ちゃん・・今は病気治さないと・・」

「今日・・今行きたいんだ・・連れて行ってくれないか雛乃・・」

有無を言わせない、いつもの兄とは想像付かない
強気な言葉に雛乃は頷いて
車椅子に兄を座らせ病室を出る

後ろから
「私に黙って何処に行こうと言うんだい。君たち」
医師の厳しい視線が雛乃たちを阻む

「あのね・・お兄ちゃん桜の樹見に行きたいって言うから・・
だから・・」
怖いと思いながらも医師に説明する

雛乃の言葉に兄の方に視線を向け
「勝手は困るよ。私も一緒に行こう・・
 私は君の担当医だからね」

「僕たちだけで行かせて欲しいんです・・お願いします」

兄の何かの決意を垣間見た医師は、溜息をつき
「・・・・解った・・30分だけだからね・・
 時間過ぎても戻らなかったら
 迎えに行くよ・・解ったね?」

「・・・・ありがとうございます」



「・・・・綺麗だね・・」

小高い丘の上
心地良い風で枝が揺れ、桜の花びらがはらはらとおちる
兄は車椅子から降り、丘に寝転がり桜を見上げてる

何かが落ち着かない・・何だろう・・
病室でない兄との久しぶりの2人きり

そんな気持ちを誤魔化すように兄を膝枕する
「・・・ありがとう・・凄く楽になったよ
 雛乃に逢ったのが、つい昨日のように思い出すよ
 初めて雛乃を見た時、雛乃は僕が守る
 そうして居たいって思ったんだ・・小さいながらね
 雛乃は僕にとって大切な存在なんだよ・・今もそうだ」

兄の言葉に涙が出そうになるのを堪えて
「ひなも・・お兄ちゃんが好き・・・大好き・・」

兄はそんな雛乃を微笑みながら見つめ
「・・・・・もう少し雛乃が大きくなって
 僕の前に好きな男の子を連れて彼氏を紹介するのかな・・
 僕は許せなくて雛乃はお前になんかにやるものかって・・
 ・・それでも
 雛乃が幸せだったら僕は許してしまうんだろうね
 ・・・そんな事・・してみたかったよ」

雛乃は
「・・・・元気・・になったら・・出来る・・」
やっと伝え出た言葉はそれだけだった・・
話したい事たくさんあるのに、上手く伝える事が出来ない
頭の中がもやもやしてて考えられない

「ごめんね・・
 僕はそろそろ星空の向こうに
 逝かなくてはいけないみたいだよ
 自分の事だからね解るんだ
 最後にね。ここに来たかったんだ・・雛乃と2人で」

何かが雛乃の中で弾ける
「やぁっ・・・やだぁ・・お兄ちゃん・・・
 お兄ちゃん逝っちゃやぁ・・
 逝くなら、ひなも連れて行って・・ひなも行くの・・」
我慢してた心の感情が飛び出す
止める事の出来ない涙は、兄の頬に伝う

雛乃の頬を撫で涙を拭ってあげながら
「雛乃・・・雛乃は僕の分まで
 ・・僕たちの分まで生きて
 生きてこれからの雛乃を・・
 大きくなる雛乃を僕たちに見せて・・・」

雛乃は首を振りながら
「一人じゃ・・ひなはダメなの・・
 お兄ちゃんが居ないとひなは生きてけない・・
 これ以上大切な誰かが居なくなっちゃの・・・やだよぉ・・」

「雛乃・・雛乃泣かないで・・
 一人じゃないよ・・雛乃は一人じゃない
 僕たちはいつでも雛乃を見守っているから・・
 雛乃が淋しい時・・傍に居れないかも知れないけど・・
 その時は星空を見て祈って・・きっと願いは届くから・・・
 だから笑って・・泣かないで・・
 雛乃の悲しい顔は見たくないよ・・」

「願いが届くなら・・お兄ちゃんを連れてかないで・・
 連れて行くならひなも一緒に連れて行って・・
 それが叶わないのなら・・ひなは・・何も要らないっ!!」

「雛乃・・・雛乃ごめんね・・
 泣かせてごめん・・・
 雛乃・・・僕の大切な・・雛乃・・大好きだよ・・・」

その言葉を告げると力が抜けて
目を瞑った兄は、二度と雛乃と言葉を交わす事も
自分を見つめ、微笑む事は無かった

「やぁぁぁぁぁ・・・・・・」





兄のお葬式が滞りなく終わり
家族と過ごしてた家は売り払われ
今雛乃は、後見人である医師の家に世話になっている

あの日・・医師が駆けつけた時
混乱・狂気状態の中
決して誰にも兄を触らせるようとしない雛乃を
無理に引き離されから
雛乃はまるで表情を無くした人形のように
言葉紡ぐ事を忘れてしまったようだった

そして詩をうたう事も・・・


・・・ただ・・兄からプレゼントされた
ウサギのぬいぐるみは離さず、ぎゅっと抱いてた


・・・・それから数ヵ月後
兄が生前に入学の手続きをしてた
銀誓館学園を訪れる事となる

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プロフィール

HN:
桜月・雛乃
年齢:
27
性別:
女性
誕生日:
1997/02/02
職業:
フリッカースペード
趣味:
詩(歌)を考える事
自己紹介:
【カテゴリー説明】

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 ⇒出逢い・経験した物語を綴る場所

☆詩
 ⇒自分のお気に入りの詩紹介・もしくは想う事を詩に書き記した場所

☆イラスト絵日記
 ⇒完成したイラストを雛乃が日記で紹介する場所

☆雛乃日記
 ⇒雛乃の呟き場所

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